民泊リノベーションにかかる費用相場は?必要な工事と4つの注意点

民泊リノベーションにかかる費用相場は?必要な工事と4つの注意点

戸建てを民泊に変える場合、リノベーション費用は、部分的な改修なら50万〜150万円、水回りや内装まで直すなら200万〜500万円ほどが目安です。

古い建物では、構造や断熱の工事も必要になり、500万円を超えることがあります。

見た目から手をつけずに、まず営業に必要な工事を確認し、そのうえで内装や設備に予算を振り分けましょう。

【この記事のポイント】

  • 民泊のリノベーションは、法令適合の工事と集客のための工事に分かれる
  • 費用の目安は、部分改修で50万〜150万円、水回りと内装の改修で200万〜500万円
  • どの制度(住宅宿泊事業・旅館業・特区民泊)で運営するかで、必要な工事が変わる
  • 着工前に、用途地域・用途変更と検査済証・消防設備・管理規約と条例の4点を確認する
  • 2026年5月28日の国の通知により、住宅を旅館業に転用する場合は200㎡以下でも建築士の適合証明書が求められる

本記事では、民泊リノベーションの費用相場、物件タイプ別の違い、制度ごとに変わる工事内容、着工前に確認すべき項目を解説します。

※制度に関する記載は2026年9月3日時点の情報です。自治体の条例や運用は変更される可能性があるため、着工前に最新情報をご確認ください。

目次
  1. 民泊リノベーションで必要な2種類の工事
    1. 営業に必要な安全・設備の工事
    2. 宿泊者に選ばれる施設にするための工事
  2. 民泊リノベーションの費用は200万〜500万円が目安
    1. 工事範囲別の費用目安
    2. 工事項目別の費用と変動要因
    3. リノベ費用と開業総額を分けて考える
  3. 物件タイプによって、必要な工事と費用が変わる
    1. マンションの一室(50万〜300万円程度)
    2. 戸建て・空き家(50万〜1,500万円程度)
    3. 古民家(800万〜1,500万円以上)
  4. 運営する制度によって、必要な工事が変わる
    1. 住宅宿泊事業で運営する場合
    2. 旅館業で運営する場合
    3. 特区民泊で運営する場合
  5. 着工前に確認する4つのポイント
    1. 用途地域と選べる制度
    2. 用途変更の要否と検査済証
    3. 必要な消防設備
    4. 管理規約・貸主の承諾・自治体の上乗せ条例
  6. 売上につながる予算配分の仕方は?
    1. 定員・寝室数・動線を先に決める
    2. 水回りの清潔感と清掃のしやすさを優先する
  7. リノベーション費用を抑える方法
    1. 補助金と融資を活用する
    2. DIYできる工事と、専門業者へ任せる工事
    3. 工事費が高くなる場合はリノベ済み物件も比較する
  8. リノベーション費用の回収方法
    1. 月間収支から単純回収期間を計算する
  9. 民泊リノベーションのよくある質問
    1. 100万円以下でも始められますか
    2. 工事から開業までどのくらいかかりますか
    3. 検査済証がなくても民泊にできますか

民泊リノベーションで必要な2種類の工事

民泊のリノベーションは、住まいのリフォームとは目的が異なります。

営業許可・届出の基準を満たす工事と、宿泊者に選ばれる施設にする工事を同時に進めます。

比較項目住まいとしてのリフォーム民泊のリノベーション
目的住み心地の改善営業許可・届出の取得と、宿泊者の獲得
求められる基準建築基準法(住宅)建築基準法、消防法、旅館業法または住宅宿泊事業法
判断の基準住む人の好み予約数と稼働率
やり直しの影響費用の増加許可が下りず、営業できない期間が生じる

民泊では基準を満たしていないと営業そのものができません。工事を終えてから不足が判明すると、追加工事の費用がかかるうえに、開業も遅れます。

営業に必要な安全・設備の工事

法令に適合させるために必要になり得る工事は、次のとおりです。

  • 用途変更に伴う内装・防火に関する工事
  • 避難経路の確保と、階段・廊下の見直し
  • 内装制限に対応した壁・天井の仕上げ
  • 非常用照明・誘導灯の設置
  • 自動火災報知設備・消火器・防炎物品などの消防設備
  • 客室の床面積や、換気・採光・照明・排水の基準への対応
  • 入浴設備・洗面設備の設置または増設
  • 宿泊者の確認を行う設備(玄関帳場またはその代替設備)

すべての工事が必要とは限らず、運営制度や建物の規模によって異なります。

宿泊者に選ばれる施設にするための工事

稼働率に直結するのが、清潔感の向上や寝具・水回り・Wi-Fi環境の整備、鍵の受け渡し方法の改善です。

2つの工事は、優先順位が異なります。法令に適合しなければ営業できず、集客のための工事は収益を左右します。

予算に限りがあるなら、先に法令適合の見通しを立ててから、残りを集客に配分するのが安全です。費用配分の考え方は、記事後半で解説します。

必要な工事を判断できない場合は、物件の条件と運営制度を照らし合わせて整理しましょう。

民泊リノベーションの費用は200万〜500万円が目安

民泊のリノベーション費用は、建物の状態と工事の範囲で決まります。

清掃と部分補修で済む物件と、水回りや構造まで改修する物件では、費用に10倍近い差が出ます。

以下は、延床面積30坪前後の戸建てを想定した工事費の概算(税別)です。設計料・家具・家電・申請費用は含みません。

建物の所在地や劣化状況によって大きく変動するため、実際の金額は必ず現地調査と見積もりで確認してください。

工事範囲別の費用目安

工事の範囲ごとの費用は、次のとおりです。

工事の範囲費用の目安主な内容
部分改修50万〜150万円清掃、クロス張り替え、部分補修、設備の点検
水回りと内装の改修200万〜500万円浴室・キッチン・洗面・トイレの交換と内装の刷新
構造・断熱まで含む改修500万〜2,000万円耐震補強、断熱、間取り変更、配管・電気の引き直し

多くの物件で必要になるのが、水回りと内装の改修です。水回り4点を交換して内装を張り替えると、400万円前後になることがあります。

30坪の戸建てで間取りから見直す場合は、800万〜1,500万円が目安です。築40年を超える建物では1,000万円以上になることもあり、工期が3〜4か月に及ぶ場合もあります。

工事項目別の費用と変動要因

工事項目別に見ると、費用のかかる部分を把握しやすくなります。

項目費用の目安主な変動要因必須性
建物の劣化状況調査5万〜12万円床下・小屋裏まで見るか任意・推奨
内装(クロス・床)50万〜200万円面積、下地の傷み物件による
水回り4点の交換150万〜300万円設備のグレード、配管の状態物件による
耐震・断熱・構造200万〜1,000万円以上築年数、既存の状態物件による
消防設備15万〜100万円以上階数、延べ面積、運営形態内容により異なる
家具・家電・寝具15万〜40万円新品か中古か、定員原則必要
残置物撤去・外構10万〜50万円家財の量、庭・駐車場の状態物件による

消防設備の金額は、事前に断定できません。建物の構造と運営形態によって必要な設備が変わるためです。

見積もりは、総額だけでは比較できません。同じ「フルリノベーション」でも、会社によって含まれる工事の範囲が違います。複数社へ依頼する場合は、工事項目ごとに比較しましょう。

リノベ費用と開業総額を分けて考える

リノベーション費用だけでは、開業に必要な総額を把握できません。

工事費のほかに、次の費用がかかります。

申請を行政書士に依頼する場合は、住宅宿泊事業法で20万円前後、旅館業法や特区民泊で25万〜40万円が目安です。

これらを合計した開業総額の目安は、次のようになります。

  • 状態のよい物件:150万〜350万円程度
  • 水回りと内装の改修が必要な物件:300万〜700万円程度
  • 構造まで手を入れる物件:600万円以上

費用の内訳をさらに細かく知りたい方は、「民泊を始める際の初期費用はいくらくらい?」もあわせてご覧ください。

物件タイプによって、必要な工事と費用が変わる

同じ民泊でも、マンションの一室と築古の戸建てでは、工事内容も費用も大きく異なります。

物件のタイプごとに、費用がかさみやすい箇所と、着工前に確認すべき点が異なります。

マンションの一室(50万〜300万円程度)

区分所有のマンションでまず確認したいのが、管理規約で民泊が禁止されていないかです。禁止されていれば、どれだけ工事をしても営業できません。

工事できるのは専有部分だけです。共用部分に関わる消防設備や避難経路については、管理組合との調整が必要になります。

躯体や屋根に手を入れられない分、費用は戸建てより抑えやすい傾向があります。内装と水回りの改修が中心になるためです。

戸建て・空き家(50万〜1,500万円程度)

戸建ては一棟貸しにできるため、定員を増やしやすく、宿泊単価を上げやすいのが特徴です。

一方で、屋根・外壁・給排水など、建物全体の維持費が自己負担になります。階数によって必要な消防設備が変わるため、3階建て以上では費用が大きくなります。

長期間放置された空き家は、見えない部分で劣化が進んでいることが多いため注意が必要です。

  • 雨漏りによる下地や構造材の腐食
  • シロアリの被害
  • 給排水配管の劣化
  • 電気設備の老朽化
  • 残置物(家財道具)の大量放置
  • 庭木の繁茂、駐車場の不整備

こうした問題が着工後に判明すると、追加工事が必要になります。残置物の撤去や外構の整備といった、空き家特有の費用も発生します。

空き家を持っていれば安く民泊を始められるとは限りません。むしろ状態によっては、新たに物件を借りるより高くつくこともあります。

空き家を活用する場合の判断材料は、「空き家を民泊に活用するメリット・デメリットは?」で詳しく解説しています。

また、賃貸物件でシロアリ被害が見つかった場合は、自己判断で駆除を進めず、貸主や管理会社への確認が必要になるケースがあります。賃貸物件でシロアリ駆除を始める際の注意点については、以下の記事も参考になります。
参考:賃貸物件でシロアリ駆除を始めるための注意点を解説|ハウスクリーン

古民家(800万〜1,500万円以上)

古民家は、改修費用を見通しにくい物件です。

伝統工法の建物は現行の耐震基準を満たしていないことが多く、補強にいくらかかるかは調査してみないと分かりません。

断熱がほとんど入っていない点も見落とされがちです。冬季の暖房費が想定を超え、運営開始後の収支を圧迫することがあります。

その一方で、外国人旅行者に対する訴求力は高く、宿泊単価を上げられる可能性があります。改修費と見込める宿泊単価の両方を踏まえて判断しましょう。

古民家ならではの進め方は、「古民家で民泊経営を成功させる方法」で解説しています。

運営する制度によって、必要な工事が変わる

民泊の運営制度は、住宅宿泊事業・旅館業・特区民泊の3つです。選ぶ制度によって、必要な工事と費用が変わります。

設計に入る前に制度を決めておかないと、後から用途変更や設備の追加が必要になります。

運営制度営業日数建築基準法上の主な考え方工事への主な影響
住宅宿泊事業(民泊新法)年間180日以内住宅として扱われる用途変更は原則不要。消防設備は規模と運営形態による
旅館業(簡易宿所・旅館ホテル営業)上限なし特殊建築物として扱われる用途変更と構造設備基準への対応が必要
特区民泊上限なし(最低宿泊日数あり)既存の共同住宅や戸建住宅を利用できるが、自治体・建物・滞在日数に応じた安全措置や用途地域の確認が必要自治体の認定基準に沿った居室面積・設備の確認が必要

住宅宿泊事業で運営する場合

住宅宿泊事業法では、人を宿泊させる日数が1年間で180日を超えられません(同法第2条第3項)。この1年は暦年ではなく、毎年4月1日正午から翌年4月1日正午までで数えます。

建物は住宅として扱われるため、用途変更は原則として不要です。3つの制度のなかで、工事の負担はもっとも軽くなります。

ただし、年間180日の営業日数上限があるため、投資回収の計算では稼働日数の上限を必ず反映させてください。

もうひとつ注意したいのが、どんな空き家でも届出できるわけではない点です。台所・浴室・便所・洗面設備を備えたうえで、現に居住しているか、入居者を募集しているか、随時居住に使われている建物であることが求められます。

長く放置された空き家をそのまま届け出られるとは限りません。制度上の「住宅」に該当するかを、早い段階で保健所に確認してください。詳細は、観光庁の「民泊制度ポータルサイト」で確認できます。

旅館業で運営する場合

旅館業なら通年営業できますが、旅館業法施行令の構造設備基準を満たす必要があります。

主な基準は、次のとおりです。

  • 旅館・ホテル営業:1客室7㎡以上(寝台を置く客室は9㎡以上)
  • 簡易宿所営業:客室の延床面積33㎡以上(宿泊者を10人未満とする場合は3.3㎡×人数以上)

宿泊者を確認する設備についても違いがあります。旅館・ホテル営業では玄関帳場などが必要ですが、厚生労働省令の基準を満たすICT設備で代替できる場合があります。

簡易宿所営業では玄関帳場の設置義務はありません。ただし自治体の条例で扱いが異なるため、事前の確認が必要です。

特区民泊で運営する場合

特区民泊は旅館業法の適用を受けない制度で、既存の共同住宅や戸建住宅を利用できます。住居専用地域でも営業できる場合があり、立地の制約が小さいのが特徴です。

一方で、実施できる区域が限られています。認定基準は国家戦略特別区域法施行令で定められており、居室は1室あたり25㎡以上が原則です。ただし自治体の判断で変更できます。

最低宿泊日数は2泊3日以上が原則で、条例によってこれより長く設定されている場合があります。制度の全体像は、観光庁の「民泊制度ポータルサイト」で確認してください。

制度の運用は自治体の判断で変わります。大阪市では、2026年5月29日をもって新規の認定申請の受付が終了しました。特区民泊を検討する場合は、まず実施区域に該当するかを確認してください。

着工前に確認する4つのポイント

許可や届出に必要な条件を着工前に確認しておけば、完成後の追加工事や計画変更のリスクを大きく減らせます。

特に旅館業を選ぶ場合は注意が必要です。2026年5月28日の国の通知により、建築基準法への適合確認が厳格化されました。

着工前に確認する項目は、次の4つです。

  • 用途地域で、その建物がどの制度で運営できるか
  • 用途変更の確認申請が必要か、検査済証など建築関係の書類が残っているか
  • 消防設備として何が必要か
  • 管理規約・貸主の承諾・自治体の上乗せ条例

用途地域と選べる制度

住居専用地域などでは、ホテル・旅館を建てられません。旅館業を選ぶ場合は、物件の所在地によって営業の可否が決まります。

住宅宿泊事業であれば住宅として扱われるため、立地の制約は小さくなります。ただし自治体の条例で、営業できる区域や期間が制限されている場合がある点には注意が必要です。

特区民泊は住居専用地域でも営業できる場合がありますが、実施区域が限られます。

用途地域は、自治体の都市計画課や、公開されている都市計画図で確認できます。物件を取得する前に調べておきましょう。

用途変更の要否と検査済証

住宅から旅館・ホテル(簡易宿所を含む)へ用途を変更する場合、変更部分の床面積が200㎡を超えると建築確認申請が必要です。

200㎡以下であれば、用途変更を理由とする建築確認は原則として不要です。ただし手続きが不要というだけで、建築基準法に適合していること自体は引き続き求められます。

なお、大規模な修繕や模様替えを伴う場合は、2025年4月の建築基準法改正で対象が広がったため、建物の規模によっては別途、建築確認が必要になることがあります。

また、2026年5月28日には、厚生労働省と国土交通省が「旅館業の許可時における建築基準法への適合確認の徹底について」を連名で通知しました。

対象は、既存の戸建住宅や共同住宅をホテル・旅館へ用途変更し、旅館業の許可を申請する場合です。この場合、次の書類を求めることとされました。

  • 200㎡を超える場合:用途変更に係る確認済証

つまり、確認申請が不要な規模でも、建築士による適合証明が必要です。その費用と期間は、資金計画に組み込んでおきましょう。

適用を開始する時期は自治体ごとに定められており、岡山市のように通知本文と証明書の参考様式を公開している自治体もあります。物件を取得する前に、申請先の保健所と建築指導課の双方へ確認してください。

あわせて確認したいのが、検査済証の有無です。古い戸建てでは、交付されていない、あるいは紛失しているケースが少なくありません。

まずは特定行政庁で、処分等概要書の閲覧や台帳記載事項証明書の発行を受けて交付の有無を調べます。それでも確認できない場合は、建築士や指定確認検査機関による現況調査で適合状況を調べる方法があります。手順は国土交通省の「既存建築物の現況調査ガイドライン」で確認してください。

ただし、調査報告書は検査済証とみなされるものではありません。追加の費用と期間がかかるため、スケジュールに余裕を持たせてください。

必要な消防設備

消防設備の要否は、家主が住んでいるかどうかと、宿泊室の広さで大きく変わります。

家主が居住していて、宿泊室の床面積の合計が50㎡以下であれば、消防法令上は原則として一般住宅と同様の扱いになります。

それ以外の場合は、ホテル・旅館と同様の防火安全対策が必要です。ただし延べ面積300㎡未満であれば、特定小規模施設用の自動火災報知設備で対応できる場合があります。

判定の詳細は、総務省消防庁の「民泊における消防法令上の取り扱い等」で確認できます。

設備の要否は建物の構造と運営形態で変わるため、金額を先に決めつけないことが大切です。着工前に管轄の消防署へ相談し、必要な設備を確定させてから見積もりを取りましょう。

管理規約・貸主の承諾・自治体の上乗せ条例

マンションでは、管理規約で民泊が禁止されている場合があります。現時点で禁止されていなくても、後から規約が改正されるリスクは否定できません。

賃貸物件を使う場合は、貸主の承諾と転貸の可否を確認する必要があります。口頭ではなく、書面で承諾を得ておくことが重要です。

自治体によっては、条例で営業できる区域や期間を独自に制限しています。国の制度で認められていても、地域によっては営業できません。

地域ごとの規制は、自治体が公表する一次情報で確認しましょう。観光庁の「民泊制度ポータルサイト」とあわせて、自治体、保健所、建築指導課、消防署へ確認してください。

売上につながる予算配分の仕方は?

限られた予算は、稼働率や宿泊単価の向上につながる工事へ優先的に配分しましょう。

定員・寝室数・動線を先に決める

月間売上は、平均宿泊単価と販売日数で決まります。なかでも宿泊単価は、定員に大きく左右されます。

間取りを変更して寝室を1つ増やせるなら、その工事は売上の上限そのものを引き上げる要素となるでしょう。内装のグレードを上げるより効果が大きい場合もあります。

ただし、定員を増やすと客室面積の基準や消防設備の要件に影響する場合があります。制度の要件とあわせて検討してください。

水回りの清潔感と清掃のしやすさを優先する

予約サイトで宿泊者が最初に見るのは、写真です。写真で伝わる場所に予算を寄せるのが基本になります。

優先度が高いのは、次の箇所です。

  • 浴室・洗面・トイレの清潔感
  • 寝具とベッドまわり
  • リビングの照明と広さの見え方
  • Wi-Fiの通信環境
  • 冷暖房の効き

清掃や運営のしやすさも重要です。清掃は1回あたり4,000〜8,000円が継続的にかかるため、掃除しやすい床材や動線にしておくと運営コストが下がります。

鍵の受け渡し方法、リネンの保管場所、ゴミの一時保管場所も、工事の段階で決めておきましょう。

一方で、費用をかけても回収しにくい工事もあります。

  • 宿泊者が使わない部屋の内装
  • 過度に高額な設備へのグレードアップ
  • 写真に写らない場所の装飾

リノベーション費用を抑える方法

リノベーション費用は、自己資金だけで賄う必要はありません。

制度を使って負担を軽くする方法と、そもそも大がかりな工事を避ける方法があります。

補助金と融資を活用する

空き家の活用や観光振興を目的とした補助金が、自治体ごとに用意されています。

注意したいのが、申請のタイミングです。多くは着工前の申請が条件で、工事を始めてからでは対象外になります。

制度の内容と募集時期は、自治体と年度によって変わります。必ず自治体の公式サイトで最新情報を確認してください。

資金が足りない場合は、日本政策金融公庫や民間金融機関の融資も選択肢になります。

審査では収支計画と物件の適法性が見られます。用途変更や検査済証の状況が判断材料になり得るため、書類は早い段階で揃えておきましょう。

資金調達の進め方は、「民泊融資の基礎から審査・補助金まで徹底解説!」で詳しく解説しています。

DIYできる工事と、専門業者へ任せる工事

自分で対応しやすい作業は、次のとおりです。

  • 壁の塗装
  • クロスの一部張り替え
  • 家具の組み立てと配置
  • 庭の手入れ
  • 残置物の分別と搬出

一方、電気工事や一定の消防設備工事、給水装置工事には、資格者や指定工事事業者による施工が必要になります。

必要な資格や指定工事事業者の範囲は、工事内容や地域のルールによって異なります。DIYに着手する前に、施工会社、消防署、水道事業者へ確認してください。

資格が不要な作業でも、材料は自由に選べません。ホテル・旅館用途では内装制限がかかる部分があり、塗装やクロスの張り替えでも使える材料が限られます。着手前に建築士や施工会社へ確認しましょう。

残置物も、自分で分別するのは問題ありませんが、運搬や処分を業者へ委託する場合は、廃棄物処理法上の許可を持つか確認してください。

施工不良は許可取得や安全性に影響するため、法令に関わる部分はDIYの対象にしないと決めておくのが安全です。

工事費が高くなる場合はリノベ済み物件も比較する

見積もりが想定を大きく超えた場合、工事そのものを避ける選択肢もあります。すでに稼働している民泊を、事業ごと購入する方法です。

内装や設備が整っているため、運営実績を引き継げれば開業までの期間も短縮できます。

ただし、許認可や契約がそのまま引き継げるとは限りません。賃貸借契約や予約サイトのアカウントは、個別に確認が必要です。

工事費が想定を超えた場合は、費用と開業までの期間を比較しましょう。仕組みは「民泊M&Aとは?引き継げるもの・引き継げないもの、価格の決まり方を解説」、価格の目安は「民泊M&A相場はいくら?」で解説しています。

リノベーション費用の回収方法

リノベーション費用の回収期間は、売上ではなく、運営経費を差し引いた月間収支で計算します。

稼働率が想定を下回る場合も含め、複数のパターンで試算しましょう。

月間収支から単純回収期間を計算する

ここでいう月間収支は、月間売上から運営経費を差し引いた概算額で、税金や借入金の返済は含みません。

計算式は、次のとおりです。

月間売上=平均宿泊単価×販売した宿泊日数

月間収支=月間売上-運営経費

単純回収期間=初期費用÷月間収支

初期費用500万円のケースで試算すると、次のようになります。

想定月間売上月間経費月間収支単純回収期間
好調時50万円30万円20万円25か月(約2年1か月)
通常時35万円25万円10万円50か月(約4年2か月)
低稼働時20万円18万円2万円250か月(約20年10か月)

※説明用の試算です。実際の売上・経費を保証するものではありません。

注意したいのは、低稼働時と好調時で回収期間が10倍変わる点です。稼働率の想定を甘く見積もると、計画が大きく崩れます。

この単純計算には、税金、突発的な修繕、設備の交換、借入金の利息が含まれていません。実際の回収期間は、表の数字より長くなると考えてください。

住宅宿泊事業で運営する場合は、年間180日の上限があります。稼働日数の想定に上限がかかる点も反映させましょう。

住宅宿泊事業で家主が不在になる場合は、原則として住宅宿泊管理業者への委託が必要です。その委託料も運営経費に含めて計算してください。

運営代行を使うかどうかは、料率の高さではなく、委託後に手元へ残る金額で判断します。

経費の内訳や項目ごとの相場は、「民泊収益シミュレーションのやり方とは?」で解説しています。投資としての考え方は「民泊投資とは?利回りやメリット、リスクまでわかりやすく解説」もあわせてご覧ください。

民泊リノベーションのよくある質問

民泊のリノベーションについて、よく寄せられる質問に回答しました。

100万円以下でも始められますか

状態のよい物件で、清掃と部分補修に絞れば、改修費だけなら100万円以下に収まる可能性があります。

ただし、消防設備、家具家電、申請費用を含めた開業総額では、100万円を超えることが多くなります。

工事から開業までどのくらいかかりますか

工事の範囲によって異なります。部分改修なら数週間、構造まで手を入れる場合は3〜4か月かかることもあります。

さらに、申請・検査・消防の調査にかかる期間も見込む必要があります。

検査済証がなくても民泊にできますか

検査済証がなくても直ちに不可能とは限りませんが、適合状況の調査に追加の費用と期間がかかります。

違反増築や図面の不足があると、是正工事をしても適合を証明できず、計画を断念せざるを得ない場合もあります。物件を取得する前に、書類の有無と申請先の運用を確認しておきましょう。

まとめ

民泊のリノベーションは、法令に適合させる工事と、集客のための工事に分かれます。

費用は建物の状態で大きく変わり、部分改修なら50万〜150万円程度、水回りと内装の改修なら200万〜500万円程度が目安です。工事費とは別に、家具・家電や申請費用などを含む開業総額も見積もりましょう。

着工前に確認したいポイントは、次のとおりです。

確認する順番内容確認先
1どの制度で運営するか保健所、自治体
2用途地域と条例の制限都市計画課、自治体
3用途変更の要否と建築基準法への適合建築指導課、建築士
4検査済証など建築関係書類の有無特定行政庁
5必要な消防設備消防署
6工事範囲と費用、回収の見込み施工会社、運営の相談先

制度の選択が、工事の中身と費用を決めます。設計に入る前に、住宅宿泊事業・旅館業・特区民泊のどれで運営するかを固めてください。住宅を旅館業へ転用する場合は、用途変更部分が200㎡以下でも建築士による適合証明書が求められます。

工事費が想定を超える場合は、すでに稼働している民泊の購入も比較対象になります。工事と購入を、費用と期間の両面から比較しましょう。

Stay&では、物件の選定から申請、リノベーション、運営開始までを一貫してご相談いただけます。すでに運営している民泊の売却や、リノベーション済み物件の購入にも対応しています。