民泊の消防設備は何が必要?設置基準と費用の目安をケース別に解説

民泊の消防設備は何が必要?設置基準と費用の目安をケース別に解説

民泊の消防設備にかかる費用は、5万〜100万円が目安です。

既存の設備を使えるマンションなら数万円で収まる場合もあり、建物全体に配線工事が必要なら50万円を超えます。

必要な設備は、建物の広さだけでは決まりません。人を宿泊させる間に家主が不在になるか、宿泊室の床面積の合計が50㎡を超えるかで、消防法令上の用途が判定されます。

判定された用途をもとに、延べ面積や階数に応じて必要な設備の範囲が決まります。

見積もりを取る前に、平面図を持って管轄の消防署に事前相談し、用途の判定と必要な設備を確定させましょう。

【この記事のポイント】

  • 消防法令上の用途は、家主が不在になるかどうかと、宿泊室の床面積の合計が50㎡を超えるかどうかで判定される
  • 家主不在型は面積を問わず宿泊施設(5項イ)として扱われ、自動火災報知設備が必要になる
  • 延べ面積300㎡未満なら、配線工事の不要な簡易型を使える場合がある
  • マンションでは既存設備を利用でき、追加工事が不要になることも多い
  • 誘導灯は要件をすべて満たせば免除される
  • 着工届は工事着手の10日前までのため、手続きは工事前から始まる

本記事では、消防法令上の用途の判定、用途別に必要な設備、費用の目安、マンションでの確認事項、適合通知書を取得するまでの流れを解説します。

※制度に関する記載は2026年9月11日時点の情報です。自治体の条例や運用は変更される可能性があるため、事前に最新情報をご確認ください。

目次
  1. 民泊の消防設備は用途判定で決まる
    1. 一戸建てで民泊を行う場合
    2. マンションの一室で民泊を行う場合
  2. 用途別に必要な消防設備の一覧
    1. 住宅用火災警報器と自動火災報知設備の違い
    2. 自動火災報知設備は簡易型の可否で費用が変わる
    3. 誘導灯は要件をすべて満たせば免除される
    4. 消火器は面積と階の条件で要否が決まる
    5. 設備以外に必要な防火対策
    6. 非常用照明器具は消防法とは別の措置
  3. 民泊の消防設備の費用は5万〜100万円が目安
    1. 条件別の費用例
    2. 見積もりの内訳と金額が分かれる理由
  4. マンション民泊で確認する4点
    1. 管理規約で民泊が禁止されていないか
    2. 建物の面積と民泊部分の割合を確認する
    3. 消防署に確認する項目
    4. 管理組合に説明する項目
  5. 消防設備の費用を抑える方法
    1. 簡易型と誘導灯免除を事前相談で確認
    2. 自分で設置・点検できる範囲を確認する
  6. 民泊の消防設備のよくある質問
    1. 賃貸物件では誰に工事の承諾を得ますか
    2. 設備を追加しない場合も消防署への相談は必要ですか
    3. 消防設備だけで50万円を超えることはありますか

民泊の消防設備は用途判定で決まる

民泊に必要な消防設備は、建物の広さだけでは決まりません。

まず、人を宿泊させる間に家主が不在になるか、宿泊室の床面積の合計が50㎡を超えるかで、消防法令上の用途が判定されます

判定の結果は、次の3パターンに分かれます。

民泊の形態宿泊室の床面積の合計消防法令上の用途
家主が不在にならない50㎡以下一般住宅と同じ扱い
家主が不在にならない50㎡を超える宿泊施設(5項イ)
家主が不在になる面積を問わない宿泊施設(5項イ)

宿泊室とは、宿泊者が就寝するために使う室です。押入れや床の間は、床面積に含みません。

用途が決まったあとに、延べ面積や階数、民泊部分の割合に応じて、必要な設備の範囲が定まります。

判定の考え方は、消防庁と住宅宿泊協会の「民泊を始めるにあたって」で公開されています。

一戸建てで民泊を行う場合

一戸建て住宅では、家主の在不在を建物単位で判断します。家主不在型なら、1階の一部だけを民泊にする場合でも建物全体が宿泊施設として扱われます。

一般住宅と同じ扱いになる場合も、設備の確認は必要です。住宅用火災警報器は寝室に設置し、2階建て以上では寝室のある階の階段上部にも必要になる場合があります。

用途の判定は、制度選びとは別の話です。営業日数や用途変更の要否は制度の問題で、宿泊施設として扱われるかどうかは家主の在不在と宿泊室の面積で決まります。

制度ごとの違いは「旅館業法と民泊新法の違いとは?」、旅館業への切り替えは「民泊から旅館業へ切り替えたい方必見!メリット・手続き・費用・注意点を徹底網羅」で解説しています。

マンションの一室で民泊を行う場合

共同住宅では、判定を住戸単位で行います。その結果をもとに、建物全体の用途が決まります。

5項イ扱いの住戸の床面積が建物全体の90%以上なら建物全体が5項イ、10%以下かつ300㎡未満なら共同住宅(5項ロ)のまま、それ以外は複合用途(16項イ)です。すべての住戸が一般住宅扱いなら共同住宅(5項ロ)です。

1戸でも宿泊施設として扱われる住戸ができると、建物全体の用途が変わります。ただし用途が変わっても、既存の設備で足りるケースは少なくありません。

追加工事の範囲を決めるのは、建物の面積と既存設備です。マンション特有の確認事項は、記事後半の「マンション民泊で確認する4点」で解説します。

自分の物件がどの用途に当たるか判断がつかない場合は、運営計画とあわせて整理しましょう。

用途別に必要な消防設備の一覧

宿泊施設(5項イ)に当たる場合は、延べ面積にかかわらず自動火災報知設備と誘導灯、防炎物品への対応が必要です。

消火器と防火管理者は、面積や収容人員によって要否が変わります。

設備・対応一般住宅と同じ扱い宿泊施設(5項イ)
住宅用火災警報器寝室等に設置自動火災報知設備があれば不要
自動火災報知設備不要すべてのもの(延べ面積300㎡未満なら簡易型が可)
誘導灯不要すべてのもの(免除される場合あり)
防炎物品不要すべてのもの
消火器不要延べ面積150㎡以上、または地階・無窓階・3階以上の階で床面積50㎡以上
防火管理者の選任不要建物全体の収容人員が30人以上
消防用設備等の点検報告不要点検が年2回、報告が年1回

用途ごとに求められる対応は、消防庁の「民泊を始めるにあたって」に一覧で示されています。

すでに設置されている設備があれば、重複して設置する必要はありません。共同住宅での考え方は、記事後半で解説します。

住宅用火災警報器と自動火災報知設備の違い

火災を知らせる設備は3種類あります。名前は似ていますが、求められる場面も費用も別物です。

比較項目住宅用火災警報器簡易型(特定小規模施設用)配線式の自動火災報知設備
連動の有無単独型と連動型があるすべての感知器が連動するすべての感知器が連動する
受信機の要否不要感知器のみで構成すれば不要必要
工事の資格不要感知器のみなら不要消防設備士が必要
着工前の届出不要感知器のみなら不要(設置後の届出は必要)必要
費用の目安1台数千円〜5万〜20万円50万〜100万円以上

家電量販店で販売されている連動型住宅用火災警報器は、感知性能が異なります。簡易型の感知器としては使えません

自動火災報知設備は簡易型の可否で費用が変わる

宿泊施設では、延べ面積を問わず設置が必要です。ただし延べ面積300㎡未満であれば、簡易型を使える場合があります

2024年7月23日に公布された総務省令第74号により、使える範囲は広がりました。屋内階段が1つしかない3階建て以上の建物(特定一階段等防火対象物)も対象に加わっています。

ただし、次の条件を満たす必要があります。

  • 延べ面積または床面積が300㎡未満であること
  • 警戒区域が2つ以上になる場合は、火災の発生した警戒区域を特定できる感知器をすべてに使うこと
  • その場合は、居室と2㎡以上の収納に加え、階段、廊下、通路、エレベーターの昇降路などにも感知器を設けること

階数だけでは、配線式が必要かどうかを判断できません。面積、警戒区域の数、感知器の機能で決まるため、事前相談で確認しましょう。

改正の内容は、消防庁の「改正省令等の公布」で確認できます。

感知器の台数も、見積額に影響します。居室、台所、2㎡以上の収納、可動間仕切りや垂れ壁で区画された部分ごとに設置するためです。

収納の数や間仕切りの有無で台数が変わるので、見積もりを比較する際は設置本数もあわせて確認しましょう。

誘導灯は要件をすべて満たせば免除される

宿泊施設では、出入口や通路、階段への設置が必要です。ただし避難に支障が生じない場合は、消防法施行令第32条の特例で免除できます

要件は建物の種類と階ごとに異なります。いずれも、すべてを満たすことが条件です。

一戸建ての避難階(1階)は、次のすべてを満たす場合です。

  • 各居室から直接外部へ避難できる、または廊下に出れば簡明な経路で避難口へ到達できる
  • 建物の外へ避難した人が、建物の開口部から3m以内を通らずに安全な場所へ避難できる
  • 避難経路図の掲示などにより、避難口の位置を容易に理解できる措置を講じている

一戸建ての2階以上の階では、要件が次のように変わります。

  • 各居室から廊下に出れば、簡明な経路で容易に階段へ到達できる
  • 廊下等に非常用照明装置があるか、居室に携帯用照明器具を常時使える状態で置いている
  • 避難経路図の掲示などの措置を講じている

共同住宅の住戸内は、次のすべてを満たす場合です。

  • 民泊を行う住戸の床面積が100㎡以下である
  • 住戸内の廊下に非常用照明装置があるか、各宿泊室に携帯用照明器具を置いている
  • すべての宿泊室が、直接外部か避難上有効なバルコニーに至る、または2つ以上の居室を経由せずに玄関へ通じる廊下に至る

共同住宅には、別の特例もあります。主要構造部が耐火構造で、住戸が耐火構造の壁と床で200㎡以下に区画されているなどの要件を満たせば、民泊がある階のみの設置で足ります。

注意したいのが、誘導灯が免除されても避難の案内まで不要になるわけではない点です。避難経路図の掲示や、誘導標識の設置を求められることがあります。

誘導標識は電源を必要としない標識板で、原則として誘導灯の代わりにはなりません。免除の条件として、避難口の位置を理解できる措置が求められるためです。

混同されやすい4つの設備の役割は、次のとおりです。

設備役割根拠となる法令
誘導灯停電時も点灯し、避難口の位置と避難方向を示す緑色の灯火消防法
誘導標識電源を使わずに避難口や避難方向を表示する標識板消防法
非常用照明装置停電時に一定の明るさを確保し、避難経路を視認できるようにする照明建築基準法、住宅宿泊事業法第6条
携帯用照明器具懐中電灯など、持ち運びできる照明住宅宿泊事業法第6条

免除の判断は、管轄の消防署が行います。設置が必要になる場合は配線工事を伴うため、電気工事士などの資格が必要です。

免除の要件は、消防庁の「民泊を始めるにあたって」に、平成29年3月23日付け消防予第71号の内容として示されています。

消火器は面積と階の条件で要否が決まる

消火器が必要になるのは、延べ面積150㎡以上のもの、または地階・無窓階・3階以上の階で床面積50㎡以上のものです。

無窓階とは、避難上または消火活動上有効な開口部が、階の床面積の30分の1以下となる階を指します。

設置のポイントは、次のとおりです。

  • 家庭用ではなく業務用を設置する
  • 各階ごとに、すべての部分から歩行距離20m以下となる位置に置く
  • 通行や避難の妨げにならず、すぐ持ち出せる場所に置く
  • 見やすい位置に「消火器」の標識を掲示する

標識に英語やピクトグラムを併記すると、日本語がわからない宿泊者にも伝わります。法令上の義務ではありませんが、消防庁も併記を勧めています。

消火器の設置に、資格は必要ありません。共同住宅では共用廊下に設置済みのことが多く、住戸内への設置が不要になる場合もあります。

設備以外に必要な防火対策

設備の設置以外にも、法令上の対応が求められます。

  • カーテンやじゅうたん等は、防炎ラベルの付いた防炎物品を使う
  • 宿泊室内の見やすい場所に避難経路を表示する
  • 建物全体の収容人員が30人以上なら、防火管理者の選任と消防計画の作成・届出を行う
  • 設置後は機器点検を6か月に1回、総合点検を1年に1回行い、年1回報告する

あわせて、消防庁は次の防火対策を案内しています。義務ではありませんが、宿泊者の安全に直結する内容です。

  • 避難経路図には避難経路を2つ以上示し、玄関から避難できない場合の経路も表記する
  • 避難経路図に英語やピクトグラムを併記する
  • 火災時にエレベーターを使わないよう周知する
  • 火気使用器具の取り扱いについて、具体的な注意事項を掲示する
  • 喫煙の可否とルールを明示する

非常用照明器具は消防法とは別の措置

非常用照明器具は、消防法ではなく住宅宿泊事業法第6条に基づく措置です。相談窓口も消防署ではなく、自治体で住宅宿泊事業法や建築基準法を管轄する部署になります。

家主が不在にならず、宿泊室の床面積の合計が50㎡以下であれば、設置は不要です。

一方、家主が不在になる場合と、家主が不在にならなくても宿泊室の床面積の合計が50㎡を超える場合は、設置の要否を判断する必要があります。

建物全体に一律で設置するものではありません。居室の面積、開口部、避難経路の状況に応じて、届出住宅の各部分ごとに要否を判定します。

根拠となる法令は別ですが、設置しておくと誘導灯の免除要件でも判断材料になります。前述の免除要件にある「廊下等に非常用照明装置があるか」は、この設備のことです。

詳細は、国土交通省の「民泊の安全措置の手引き」で確認できます。

民泊の消防設備の費用は5万〜100万円が目安

消防設備の費用は、設備の構成と工事の範囲で大きく変わります

同じ広さでも、簡易型で足りる場合と建物全体に工事が必要な場合とでは、費用に数倍から20倍近い差が出ます。

条件別の費用例

条件ごとの費用の目安は、次のとおりです。既存設備の有無や、図面作成・届出の代行を含むかによって変わります。

条件費用の目安主な内容
マンションの一室で、既存設備を利用でき、追加工事が不要5万〜20万円携帯用照明器具、防炎物品、避難経路図
2階建ての戸建てで、簡易型の自動火災報知設備を使える20万〜50万円簡易型の自動火災報知設備、消火器、誘導灯
建物全体に配線式の自動火災報知設備が必要50万〜100万円以上受信機を含む自動火災報知設備、誘導灯

全国一律の相場ではありません。同じ条件でも、地域と業者によって差が出ます。

マンションの金額には、共用部の追加工事が不要という前提が付きます。共用部に手を入れるなら、その分の費用は別枠です。

実際の金額は、必ず現地調査と見積もりで確認してください。

見積もりの内訳と金額が分かれる理由

見積書に並ぶ項目は、大きく4つに分かれます。

区分主な項目金額が変わる要因
設備本体感知器、受信機、消火器、誘導灯、防炎カーテン感知器の台数、区域特定機能の有無、誘導灯の台数
工事配線工事、電源工事、取り付け配線の要否、階数、共用部に及ぶか
手続き図面作成、着工届・設置届、試験結果報告書代行の範囲、事前相談の同行を含むか
設置後点検、報告、電池交換、消火器の更新設備の数、自分で点検するか

金額の差が大きいのは、設備本体より工事の区分です。配線工事が必要かどうかで、総額の水準が変わります。

同じ物件でも、業者によって見積額は変わります。主な理由は次のとおりです。

  • 簡易型を使えるかどうかの判断が分かれる
  • 感知器の台数の数え方(収納、可動間仕切り、垂れ壁の扱い)
  • 誘導灯の免除を前提にしているかどうか
  • 図面作成や届出の代行、点検契約を含むかどうか

総額だけでは比較できません。4つの区分ごとに突き合わせましょう。

事前相談で用途と必要な設備を確定させてから相見積もりを取ると、条件がそろって比較しやすくなります。

開業にかかる費用の全体像は、「民泊を始める際の初期費用はいくらくらい?【リアルな金額を公開】」で解説しています。

マンション民泊で確認する4点

マンションでは、建物全体の用途が変わっても、既存の設備で足りる場合があります

追加工事の範囲は、建物の延べ面積、民泊部分の割合、既存設備の有無で決まります。

管理規約で民泊が禁止されていないか

設備を検討する前に、管理規約で住宅宿泊事業が禁止されていないかを確認します。禁止されていれば、設備を検討する必要自体がありません。

管理規約に住宅宿泊事業についての定めがない場合は、管理組合に禁止する意思がないことを確認できる書類が必要になります。

現時点で禁止されていなくても、後から規約が改正される可能性があります。総会の議案として提出される動きがないかも、あわせて確認しておきましょう。

建物の面積と民泊部分の割合を確認する

共同住宅では、住戸の広さだけで必要な設備は決まりません。民泊部分のみに簡易型を設置すれば足りるかは、次の条件で変わります。

建物全体の延べ面積民泊部分の条件自動火災報知設備の扱い
300㎡未満条件なし民泊部分のみに簡易型で足りる
300㎡以上500㎡未満延べ面積の10%以下かつ300㎡未満民泊部分のみに簡易型で足りる
300㎡以上500㎡未満延べ面積の10%を超える建物全体に感知器の設置が必要
500㎡以上条件なし建物全体に必要。既設なら新たな設置は不要

一般的な分譲マンションなら、延べ面積は500㎡を超えるのが通常です。自動火災報知設備がすでに建物全体に設置されていれば、新たな設置は不要になる場合があります

消防庁の「民泊を始めるにあたって」には、延べ面積560㎡のマンションで60㎡の住戸を家主不在型の民泊にする例が掲載されています。

この例で新たに必要となるのは、携帯用照明器具と防炎物品だけです。自動火災報知設備、消火器、誘導灯は、いずれも既設のもので足ります。

住戸が45㎡だから小規模施設の基準だけで判断できる、というわけではありません。建物全体の面積と既存設備の状況を、先に確認してください。

消防署に確認する項目

平面図を持参し、次の項目を確認します。

  • 建物全体の延べ面積
  • 民泊部分の合計面積と、建物全体に占める割合
  • 既存の自動火災報知設備の種類と設置範囲
  • 誘導灯と消火器の既存の設置状況
  • 新たに対応が必要となる住戸と共用部

民泊として利用する住戸の床面積が建物全体の90%以上になると、民泊部分以外の住戸にも防炎物品が必要です。

建物の階数や面積によっては、建物全体にスプリンクラー設備が必要になる場合もあります。

管理組合に説明する項目

共用部に手を入れる工事は、専有部分の判断だけでは進められません。管理組合の承諾や総会の決議には時間がかかります。

理事会や総会で説明する項目は、次のとおりです。

  • 運営形態(家主居住型か家主不在型か)
  • 建物全体の消防法令上の用途が変わる可能性
  • 共用部の工事の有無と、原状回復の扱い
  • 既存の消防用設備への影響
  • 緊急時の連絡体制と、苦情の窓口

承諾書の様式が管理規約で定められている場合もあります。書面の要否は、理事会に事前に確認しておきましょう。

見積もりを取る前に、消防署への事前相談と管理組合への確認を済ませておくと、手戻りを防げます。

制度ごとの位置づけは、「民泊とは?ゼロからわかる3つの制度の特徴とホテル・旅館との違いも解説」で解説しています。

消防設備の費用を抑える方法

費用を下げる方法は、必要な設備を減らすことではありません。

簡易型を使える条件と免除の要件を確認し、自分でできる範囲を見極めることが中心になります。

簡易型と誘導灯免除を事前相談で確認

簡易型を使えるか、誘導灯が免除されるかで、金額は大きく変わります。

どちらも判断するのは管轄の消防署です。業者に依頼する前に、平面図を持って事前相談へ行くのが順序になります。

見積もりが免除を前提にしていない場合、不要な設備が含まれていることがあります。事前相談の結果を伝えたうえで、見積もりを取り直しましょう。

自分で設置・点検できる範囲を確認する

消火器と、受信機や中継器を置かない簡易型の自動火災報知設備は、資格がなくても設置できます

流れは、図面の作成、事前相談、設置、試験結果報告書の作成、設置届の提出という順序です。

点検も自分で行える場合があります。有資格者による点検が必要なのは、次の防火対象物です。

  • 延べ面積1,000㎡以上の特定防火対象物
  • 消防長または消防署長が指定した、延べ面積1,000㎡以上の非特定防火対象物
  • 1階・2階以外の階に特定用途部分があり、屋内階段が1つしかないもの(特定一階段等防火対象物)

これらに当たらない小規模な防火対象物では、関係者が自ら点検と報告を行える場合があります。消防庁は、点検を支援するアプリも公開しています。

ただし、アプリの対象になるのは消火器や簡易型の自動火災報知設備など一定の範囲です。設備の種類によっては、専門業者へ依頼するほうが現実的です。

点検報告制度の内容は、「民泊を始めるにあたって」に案内があります。

一方で、感知器を配線でつなぐ場合や中継器を設置する場合は、消防設備士の資格が必要です。誘導灯や受信機を要する設備の電源工事は、電気工事士が行います。

設備工事と手続きの負担が大きい場合は、すでに消防法令適合通知書の交付を受けて稼働している民泊を、事業ごと購入する方法もあります。

ただし、許認可や届出がそのまま引き継げるとは限りません。引き継げるものと引き継げないものは、「民泊M&Aとは?引き継げるもの・引き継げないもの、価格の決まり方を解説」で解説しています。

消防法令適合通知書を取得する流れ

消防法令適合通知書は、住宅宿泊事業法が定める法定の添付書類ではありません

ただし住宅宿泊事業法施行要領(ガイドライン)により、都道府県知事等が提出を求めることとされています。実務上は、届出先の自治体から提出を求められるのが通常です。

この位置づけは、観光庁の「よくあるご質問」で説明されています。

着工届は工事着手の10日前までのため、手続きは工事に入る前から始まります。

順序主な対応主な相手
1平面図を持参し、用途の判定と必要な設備・手続きを確認する管轄の消防署
2見積もりと設備計画を確定させる消防設備業者など
3着工届が必要な工事は、着手の10日前までに提出する管轄の消防署
4設備を設置し、試験を実施する業者または本人
5設置届を工事完了から4日以内に提出する管轄の消防署
6適合通知書の交付を申請し、立入検査などの調査を受ける管轄の消防署
7交付された通知書を届出書に添付して提出する都道府県知事など

消火器や簡易型のみを自分で設置するなら、着工届は不要です。ただし、設置後の届出は必要です。

市町村の火災予防条例により、防火対象物使用開始届出書の提出を求められる場合もあります。

事前相談では、次の項目を確認しておくと手続きが円滑に進みます。

  • 消防法令上の用途の判定と、簡易型を使えるか
  • 設備の設置位置と設置範囲、共用部の扱い
  • 誘導灯の設置免除の可否
  • 設置届の添付資料と提出部数、現地検査の有無
  • 交付申請の時期と、届出までに要する期間

所要期間は、自治体と時期によって異なります。着工届が着手の10日前まで、設置届の後に調査があることから、届出の予定日から逆算して事前相談の時期を決めましょう。

手続きの詳細は、消防庁の「民泊を始めるにあたって」に様式とあわせて掲載されています。

開業までの流れ全体は、「【自宅や空き部屋で】民泊を始める方法!開業の流れや費用など解説」で解説しています。

基準を満たさない場合のリスク

消防法令への適合を確認できないと適合通知書を取得できず、自治体が求める届出書類をそろえられない可能性があります

内装工事を終えてから用途の判定や設備の不足が判明すると、追加工事と再検査が必要になります。開業が数週間から数か月遅れることも珍しくありません。

事前相談を先に済ませておけば、この手戻りは避けられます。

必要な設備が設置されていない場合、消防法に基づく設置や維持の命令の対象になることがあります。命令に従わなければ、罰則の対象です。

火災が発生した際の責任や、保険の取扱いにも影響し得ます。設備の不足は運営中の立入検査で判明することもあるため、開業の時点で適合させておきましょう。

民泊の消防設備のよくある質問

民泊の消防設備について、よく寄せられる質問に回答しました。

賃貸物件では誰に工事の承諾を得ますか

賃貸物件では、貸主の承諾を得たうえで工事を進めます。分譲マンションを借りている場合は、貸主に加えて管理組合の確認も必要です。

退去時の原状回復の扱いを含め、契約前に書面で確認しておきましょう。

設備を追加しない場合も消防署への相談は必要ですか

設備を追加しない見込みでも、事前相談は必要です。用途の判定と、既存設備で足りるかの確認を行うのは消防署だからです。

事業者が誤った判断をすると、消防法違反になる可能性があります。観光庁も、消防部局への事前相談を勧めています。

消防設備だけで50万円を超えることはありますか

消防設備だけで50万円を超える場合はあります。該当するのは、建物全体に配線式の自動火災報知設備が必要になるケースや、共用部の工事が必要になるケースです。

一方で、既存設備を利用できれば5万円程度で収まる場合もあります。

まとめ

民泊の消防設備は、まず家主の在不在と宿泊室の床面積の合計50㎡で消防法令上の用途を判定し、そのうえで延べ面積や階数に応じて必要な範囲が決まります。

費用は設備の構成と工事の範囲によって変わり、5万〜100万円が目安です。既存設備を利用できれば数万円で収まる一方、建物全体に配線工事が必要になると50万円を超えます。

確認したいポイントは、次のとおりです。

確認する順番内容確認先
1家主不在型かどうかと、宿泊室の床面積の合計自分の運営計画
2管理規約で民泊が禁止されていないか管理組合
3消防法令上の用途と、必要な設備の範囲管轄の消防署
4簡易型を使えるか、誘導灯が免除されるか管轄の消防署
5非常用照明器具の要否自治体の住宅宿泊事業法・建築基準法の担当課
6見積もりの項目と工事の範囲消防設備業者
7着工届・設置届と適合通知書の手続き管轄の消防署

マンションでは、建物全体の面積と既存設備の確認が先に来ます。住戸の広さだけでは、必要な設備は判断できません。

着工前の届出があるため、工事の見積もりより先に消防署への事前相談から始めてください。

民泊&では、物件の選定から消防を含む申請、運営開始までを一貫してご相談いただけます。すでに運営している民泊の売却や、設備の整った稼働中の民泊の購入にも対応しています。