民泊売却にかかる税金は?売却方法別の計算方法と手取りの目安
民泊を売却したときの所得税・住民税は、売却価格ではなく、取得費や譲渡費用を差し引いた譲渡所得にかかります。
個人が土地・建物を売る場合の税率は、原則として、売った年の1月1日時点で所有期間が5年を超えていれば20.315%、5年以下なら39.63%です。
事業ごと譲る事業譲渡では、家具家電などの設備や営業権を土地・建物と分けて計算します。法人が売れば法人税等がかかり、個人株主が株式を売れば原則20.315%の所得税・住民税がかかります。
課税事業者の場合は、譲渡所得とは別に、建物や設備の売却代金へ消費税がかかります。
売却価格を決める前に、自分がどの方法で売るのかを判別しましょう。そのうえで購入時の契約書や減価償却の記録を揃え、手取り額を試算してください。
【この記事のポイント】
- 不動産売却・事業譲渡・株式譲渡のどれを選ぶかで、課税される人と税金の種類が変わる
- 個人の土地・建物の譲渡所得には、原則として所有期間5年超で20.315%、5年以下で39.63%の税率がかかる
- 建物の取得費は減価償却後の金額で計算するため、想定より譲渡所得が大きくなることがある
- 課税事業者は、譲渡所得とは別に建物・設備・営業権の売却代金に消費税がかかる
本記事では、売却方法ごとの税金の違い、譲渡所得と手取りの計算方法、消費税の扱い、使える特例を解説します。
※税制に関する記載は2026年9月20日時点の情報です。税制改正や個別の事情によって取り扱いが変わるため、実際の申告前に税理士や税務署にご確認ください。
目次
民泊売却の税金は売却方法と売り手で変わる

民泊売却にかかる税金は、物件を売るのか、事業ごと譲るのか、会社の株式を譲るのかで決まります。
個人と法人のどちらが売り手かによっても、課税される人と税金の種類が変わります。
売却方法ごとの違いは、次のとおりです。
| 売却方法 | 売り手 | 課税される人 | 所得にかかる主な税金 | 税率の目安 | 消費税 |
| 不動産売却 | 個人 | 売り手本人 | 所得税・住民税(分離課税の譲渡所得) | 原則として所有期間5年超は20.315%、5年以下は39.63% | 課税事業者なら事業用の建物に課税、土地は非課税 |
| 事業譲渡 | 個人 | 売り手本人 | 土地・建物は分離課税、設備・営業権は原則として総合課税の譲渡所得 | 土地・建物は原則として上記と同じ、設備・営業権は他の所得と合算して累進税率 | 課税事業者なら建物・設備・営業権に課税、土地は非課税 |
| 不動産売却・事業譲渡 | 法人 | 法人 | 法人税・法人住民税・法人事業税 | 他の事業の損益と合算した所得に応じて計算 | 課税事業者なら建物・設備・営業権に課税、土地は非課税 |
| 株式譲渡 | 個人株主 | 個人株主 | 所得税・住民税(申告分離課税) | 原則20.315% | 非課税 |
不動産売却・事業譲渡・株式譲渡の違い
不動産売却は、土地・建物を売る方法です。民泊として運営している状態のまま引き継ぐオーナーチェンジも、この形に含まれます。
運営中の物件を売買するときの手続きや注意点は、「民泊オーナーチェンジとは?購入・売却・手続き・注意点まで徹底解説」で解説しています。
事業譲渡は、物件だけでなく設備や運営体制、取引先との契約などを事業としてまとめて譲る方法です。物件を賃借して運営している場合にも使えます。
賃借物件で営業権だけを譲るケースは、「民泊物件は譲渡できる?権利のみ売却する方法と流れも解説」が参考になります。
株式譲渡は、民泊を運営する会社の株式を譲り、会社ごと買い手に引き継ぐ方法です。
個人と法人で課税される人が変わる
個人が売る場合、譲渡所得は本人の所得になります。所得税は翌年の確定申告で納め、住民税は翌年度に課税されます。
法人が物件や事業を売ると、売却益は法人の益金になり、法人税等の対象です。個人株主が株式を売る場合は、会社ではなく株主本人に課税されます。
注意したいのは、法人が受け取った売却代金は会社の資金である点です。個人の手元へ移すには役員報酬や配当などが必要で、その段階で改めて課税されます。
読者の状況によって、先に読むべき章が変わります。
- 個人で所有する物件を売る人は、「個人の民泊物件売却は所有期間で税率が変わる」と「民泊売却は取得費と減価償却で税金が変わる」へ
- 賃借物件で運営する事業を譲る人は、「個人の事業譲渡は資産ごとに税金を計算する」と「民泊売却で消費税がかかる資産とかからない資産」へ
- 法人で運営している人は、「法人の事業譲渡と個人株主の株式譲渡の違い」へ
自分の場合にどの売却方法が合うのか分からない場合は、物件の所有形態と運営状況を整理したうえで相談しましょう。
個人の民泊物件売却は所有期間で税率が変わる

個人が土地・建物を売った場合は、売却価格から取得費と譲渡費用を差し引いた譲渡所得に、所得税と住民税がかかります。
税率は所有期間で分かれ、原則として5年超なら20.315%、5年以下なら39.63%です。
譲渡所得の計算方法
税額は、次の順番で計算します。
- 譲渡所得=売却価格-(取得費+譲渡費用)
- 課税譲渡所得金額=譲渡所得-特別控除額
- 税額=課税譲渡所得金額×税率
売却価格にそのまま税率を掛けるわけではありません。課税の対象は売却益の部分だけです。
取得費は購入代金や購入時の仲介手数料などで、譲渡費用は売却時の仲介手数料や印紙税など、売却のために直接かかった費用に限られます。
土地・建物の譲渡所得は、給与や民泊の運営による所得とは分けて計算する分離課税です。計算方法は、国税庁の「譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)」で確認できます。
売却年の1月1日時点の所有期間で税率が変わる
区分ごとの税率は、次のとおりです。
| 区分 | 所有期間 | 所得税(復興特別所得税を含む) | 住民税 | 合計 |
| 長期譲渡所得 | 5年超 | 15.315% | 5% | 20.315% |
| 短期譲渡所得 | 5年以下 | 30.63% | 9% | 39.63% |
土地・建物の所有期間は、実際に持っていた年数ではなく、売った年の1月1日時点で判定します。
たとえば、2021年6月に購入した物件を2026年中に売ると、1月1日時点では4年7か月のため短期譲渡所得です。2027年以降の売却なら、長期譲渡所得になります。
売却時期が数か月違うだけで、税率が約2倍変わる場合があります。
相続や贈与で取得した土地・建物は、原則として被相続人や贈与者の取得時期を引き継いで判定します。相続した日から5年を数えるわけではない点は、国税庁の「相続や贈与によって取得した土地・建物の取得費と取得の時期」でも示されています。
売却価格3,000万円のケースで手取りを試算する
税金の計算と、手元に残る現金の計算は別です。実際の手取りは、次の式で把握します。
手取り額=売却価格-売却に伴う支出-税金-ローン残債
「売却に伴う支出」には、税務上の譲渡費用にならない抵当権抹消の費用なども含まれます。
売却価格3,000万円、譲渡費用100万円のケースで所有期間と取得費の違いを比べると、次のようになります。
| 想定 | 取得費 | 譲渡所得 | 税率 | 税額の目安 | 手取りの目安(ローン返済前) |
| 所有期間5年超・取得費が分かる | 2,000万円 | 900万円 | 20.315% | 約183万円 | 約2,717万円 |
| 所有期間5年以下・取得費が分かる | 2,000万円 | 900万円 | 39.63% | 約357万円 | 約2,543万円 |
| 所有期間5年超・取得費が分からない | 150万円(売却価格の5%) | 2,750万円 | 20.315% | 約559万円 | 約2,341万円 |
※説明用の試算です。実際の税額を保証するものではありません。売却時に消費税の納税義務がない個人を想定し、譲渡費用以外の売却に伴う支出、特別控除、保険料の増加、端数処理は考慮していません。手取りはローン返済前の金額です。
取得費2,000万円は、土地の取得費と、建物の購入代金から減価償却費を差し引いた金額の合計を想定しています。
3つ目のパターンのように、購入時の契約書がなく取得費が分からないと、税額が約3倍になります。売却を決めたら、まず購入時の資料を探しましょう。
翌年度の国民健康保険料への影響も確認する
国民健康保険に加入している場合、土地・建物の譲渡所得も保険料の算定に含まれ、翌年度の保険料が上がる場合があります。
売却した翌年は、税金と保険料の負担が重なりやすい時期です。
算定方法や上限額は自治体によって異なります。売却を決める前に市区町村の窓口で目安を確認し、売却代金から納税資金とあわせて取り分けておきましょう。
民泊売却は取得費と減価償却で税金が変わる

建物の取得費は、購入代金そのままではなく、減価償却費を差し引いた金額で計算します。
民泊として長く運営した建物ほど取得費が小さくなり、譲渡所得と税金が大きくなりやすくなります。
建物の取得費は減価償却後の金額になる
建物や設備は、年数とともに価値が減る減価償却資産です。取得費は、購入代金から償却費の累計額を差し引いた金額になります。
土地の取得費には購入代金のほか購入時の仲介手数料なども含まれ、土地自体は減価償却しません。取得費に含められる費用は、国税庁の「取得費となるもの」で確認できます。
建物の償却費は、使い方によって計算が分かれます。民泊として使っていた期間は業務用として計算した減価償却費を、自宅として住んでいた期間は法定耐用年数の1.5倍の年数で計算した償却費相当額を差し引きます。
国税庁が公表する「住宅宿泊事業法に規定する住宅宿泊事業により生じる所得の課税関係等について(情報)」では、木造住宅(耐用年数22年)の生活用期間を33年で計算する例が示されています。計算方法の詳細は「建物の取得費の計算」にまとめられています。
過去の申告で減価償却費を計上していなかった場合でも、取得費が購入代金のまま扱われるとは限りません。申告内容は税理士に確認しましょう。
取得費が分からない場合は売却価格の5%を使える
購入時の売買契約書や領収書が見つからず取得費が分からない場合は、売却価格の5%を取得費として計算できます(概算取得費)。
実際の取得費が売却価格の5%を下回るときにも、この方法を使えます。扱いは、国税庁の「取得費が分からないとき」で示されています。
ただし概算取得費を使うと、先ほどの試算のように税額が大きくなります。相続した物件なら、被相続人が購入したときの資料を探しましょう。
改修費用や売却時の費用を漏れなく確認する
民泊の開業時に行った改修工事のうち、建物の価値を高める工事の費用は取得費に加えられます。ただし建物と同様に、減価償却後の金額になります。
譲渡費用に含められる主な費用は、次のとおりです。
- 売却を仲介した不動産会社やM&A仲介会社への手数料
- 売買契約書に貼付した収入印紙の代金
- 売却のために行った測量の費用
- 土地を売るために建物を取り壊した費用
- 借家人などに支払った立退料
一方、固定資産税や通常の維持管理のための修繕費は、原則として譲渡費用に含めません。業務用部分の固定資産税や通常の修繕費は運営中の所得の必要経費として扱い、譲渡所得の計算とは区別します。譲渡費用の範囲は、国税庁の「譲渡費用となるもの」が基準です。
ただし建物の価値を高めたり、使用できる期間を延ばしたりする工事は、資本的支出として減価償却の対象になる場合があります。
売却時にかかる抵当権抹消の費用なども譲渡費用にはなりませんが、手取りの計算では差し引く必要があります。
個人の事業譲渡は資産ごとに税金を計算する

個人事業主が民泊を事業ごと譲る場合、売却代金は土地・建物・設備・営業権に分けて税金を計算します。
土地・建物は分離課税ですが、家具家電などの設備や営業権は、原則として他の所得と合算する総合課税です。
家具家電などの設備は原則として総合課税
家具家電や設備の売却益は、土地・建物以外の資産の譲渡所得として、原則として総合課税の対象になります。
特別控除は、資産1点ごとや営業権ごとに使えるものではありません。その年の総合課税の譲渡所得について、短期・長期を合わせて最高50万円です。
所有期間5年超の長期譲渡所得なら、控除後の金額の2分の1が課税対象になります。設備などの所有期間は、土地・建物のように売却年の1月1日時点では判定せず、実際に所有していた期間で判定します。
取得価額10万円未満で購入時に経費にした備品や、一括償却資産として処理した備品の売却は、原則として譲渡所得に含まれません。その場合も非課税になるわけではなく、事業所得や雑所得として扱われます。
控除額や区分は、国税庁の「譲渡所得(土地、建物及び株式等以外の資産を譲渡したとき)」で確認できます。
営業権の売却益と取得費の考え方
営業権(のれん)は、稼働実績や集客力、運営体制など、物件や設備以外で事業が生み出す価値に付く価格です。
個人が営業権を譲渡して得た所得は、譲渡所得として総合課税の対象になります。所得税基本通達33-1では、譲渡所得の基因となる資産に、許認可などによって発生した事実上の権利も含まれるとされています。
自分で運営して築いた営業権には購入代金がなく、取得費が生じません。受け取った対価の多くが、そのまま譲渡益になります。
法人が譲渡する場合は、他の益金とあわせて法人税等の対象です。
営業権を含めた売却価格の決まり方は、「民泊M&A相場はいくら?価格目安・算定方法・許認可別の違いを徹底解説」で解説しています。
契約前に売却代金の内訳を合理的に決める
事業譲渡では、土地・建物・設備・営業権で課税方法と税率が違うため、価格の配分によって税額が変わります。
契約書に内訳の記載がないと、時価などを基に合理的に区分して計算する必要があり、税額の試算や申告時の区分が難しくなります。国税庁も、土地と建物を一括譲渡した場合には合理的に区分するという考え方を示しています。
配分の根拠は、時価などの合理的なものにしてください。税負担を下げる目的で特定の資産に偏らせると、税務調査で認められない場合があります。
内訳は買い手側の減価償却や消費税にも影響するため、契約前に双方の税理士を交えて整理しましょう。
民泊売却で消費税がかかる資産とかからない資産

課税事業者が民泊を売る場合、建物や設備、営業権の売却代金には消費税がかかります。
消費税は売却益ではなく売却代金を基に計算するため、譲渡所得が赤字の取引でも対象です。
資産ごとの扱いは、次のとおりです。
| 資産 | 消費税 | 注意点 |
| 土地(借地権を含む) | 非課税 | 不動産売却でも事業譲渡でも同じ |
| 建物 | 課税(事業用部分) | 自宅兼民泊は事業用部分のみ対象 |
| 家具家電・設備 | 課税 | 事業譲渡でまとめて売る場合も対象 |
| 営業権(のれん) | 課税 | 価格の配分で金額が変わる |
| 株式 | 非課税 | 株式譲渡は消費税の対象外 |
課税事業者は建物・設備・営業権の売却に注意する
個人事業者が事業に使っていた建物や備品を売ることも、事業として行う資産の譲渡に当たり、消費税の課税対象になります。自宅兼民泊なら事業用部分のみが対象で、自宅部分は対象外です。
課税の対象になる取引は国税庁の「資産の譲渡の具体例」、土地や有価証券が非課税になる根拠は「非課税となる取引」で確認できます。
税額の計算は課税資産の売却代金が基準になるため、取得費を下回る価格で売っても納税が生じ得ます。計算の基礎は「課税標準」に示されています。
売却価格が税込みか税抜きかも、契約書で明確にしておきましょう。
免税事業者も売却後の納税義務を確認する
基準期間(個人は前々年、法人は前々事業年度)の課税売上高が1,000万円以下なら、原則として免税事業者です。
ただし例外があります。インボイス制度で適格請求書発行事業者の登録をしている場合、課税事業者を選択している場合、特定期間の課税売上高や給与等支払額が1,000万円を超える場合は、1,000万円以下でも納税義務が生じます。判定の基準は、国税庁の「納税義務の免除」で確認できます。
売却の前に、売却する年の自分の課税区分を確かめておきましょう。
また、建物や設備の売却代金も課税売上高に含まれます。売却の時期や金額によっては、特定期間の判定を通じて翌年、基準期間の判定を通じて2年後の納税義務に影響する場合があります。
他の物件で民泊の運営を続けるなら、宿泊料にも消費税がかかる可能性を見込んでおいてください。
法人の事業譲渡と個人株主の株式譲渡の違い

法人が物件や事業を売ると法人に法人税等がかかり、個人株主が株式を売ると株主本人に原則20.315%の所得税・住民税がかかります。
どちらの手取りが多くなるかは、会社に残る資産や借入、売却後の資金の使い道で変わります。
両者を比べると、次のようになります。
| 比較項目 | 法人による事業譲渡・物件売却 | 個人株主による株式譲渡 |
| 課税される人 | 法人 | 個人株主 |
| 所得にかかる主な税金 | 法人税・法人住民税・法人事業税 | 所得税・住民税(申告分離課税) |
| 税率 | 他の損益と合算した所得に応じて計算 | 原則20.315% |
| 消費税 | 課税事業者なら建物・設備・営業権に課税 | 非課税 |
| 会社に残るもの | 売却代金と、譲渡しなかった資産や借入 | 資産・借入・契約は会社に残り、株主が交代する |
事業譲渡・物件売却は法人税等の対象になる
法人の売却益は、他の事業の損益と合算して課税所得を計算します。同じ事業年度の赤字や繰越欠損金があれば、売却益と相殺できる場合があります。
法人税の税率は、一定の中小法人なら原則として、所得のうち年800万円以下の部分に軽減税率15%、800万円を超える部分に23.2%が適用されます。
ただし大法人の完全子会社などは軽減税率の対象外で、所得金額による例外や適用期限もあります。適用関係は、国税庁の「法人税の税率」で最新の内容を確認してください。これに法人住民税と法人事業税が加わります。
売却代金は会社の資金であり、株主個人の手元へ移すには役員報酬や配当、会社を清算したときの分配などが必要です。その段階でも課税される点を、手取りの計算に入れておきましょう。
個人株主の株式売却益には原則20.315%がかかる
株式を売ったときの所得は、次の式で計算します。
株式の譲渡所得=譲渡価額-(取得費+譲渡費用)
取得費は、設立時の出資額や株式の購入代金です。個人株主が上場していない株式を売った場合、譲渡所得には原則20.315%の税率がかかります。
課税の仕組みは、国税庁の「株式等を譲渡したときの課税(申告分離課税)」に示されています。株式の譲渡は、消費税が非課税です。
個人株主が第三者へ株式を譲渡する通常のケースでは、売却益について会社ではなく株主本人が課税されます。許認可や契約、借入は会社に残ったまま、株主が買い手に交代します。
引き継げる許認可や契約の範囲は、「民泊M&Aとは?引き継げるもの・引き継げないもの、価格の決まり方を解説」で解説しています。
一方で買い手は、会社の過去の税務や未払いの債務も引き継ぎます。事業譲渡を希望される場合もあるため、税金だけで売却方法は決まりません。
自宅兼民泊・相続物件で確認したい税の特例

自宅の一部で民泊を運営していた場合や、以前の自宅を民泊に転用した場合は、3,000万円の特別控除を使える可能性があります。
相続した物件では、空き家特例を使えなくても、相続税を納めていれば取得費加算の特例を検討できます。
住んだ家なら3,000万円特別控除を検討する
居住用財産の3,000万円特別控除は、現に住んでいる家を売る場合か、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る場合に使えます。
一度も自宅として住んだことがない家は対象外です。一方、以前の自宅を民泊に転用した家は、期限内に売れば住まなくなった後の用途にかかわらず対象になり得ます。家主不在型という運営形態だけで、対象外と判断しないでください。
家屋の一部を民泊に使っている場合、控除の対象は居住用部分の譲渡所得に限られます。居住用部分がおおむね90%以上なら全体を居住用として扱え、90%未満でも居住用部分について適用を検討できます。
親子・夫婦など特別な関係にある人への売却は、対象外です。
要件は国税庁の「マイホームを売ったときの特例」、居住用部分の判定方法は「店舗併用住宅を売ったときの特例」で確認できます。民泊に使った場合の取り扱いは、「住宅宿泊事業法に規定する住宅宿泊事業により生じる所得の課税関係等について(情報)」が参考になります。
さらに、売った年の1月1日時点で所有期間が10年を超えるマイホームには、軽減税率の特例もあります。
要件を満たせば、課税長期譲渡所得6,000万円以下の部分について、通常の長期譲渡所得より低い税率で計算できます。3,000万円特別控除との併用も可能です。内容は、国税庁の「マイホームを売ったときの軽減税率の特例」で確認できます。
相続後に民泊へ使った家は空き家特例の対象外になる
被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの3,000万円特別控除は、相続の時から売却の時まで、事業・貸付け・居住に使っていないことが要件の一つです。
そのため、相続後に民泊として運営した家は対象外になります。要件は、国税庁の「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」で確認できます。
相続した家の活用を検討している段階なら、民泊として運営する前に、特例を使って売却した場合の手取りと比べておきましょう。
なお、2024年1月1日以後の譲渡では、対象となる家屋や敷地を取得した相続人が3人以上いる場合、控除限度額は1人あたり2,000万円です。
相続税を納めた物件は取得費加算を検討する
相続税が課税された人が、相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに相続した物件を売った場合、納めた相続税のうち一定額を取得費に加算できます。期限は、通常は相続開始から約3年10か月が目安です。
取得費が増えるため、譲渡所得と税額は小さくなります。内容は、国税庁の「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」に示されています。
空き家特例とは違い、相続後に民泊として運営していたことは適用の妨げになりません。適用には確定申告が必要で、期限を過ぎると使えないため、売却時期を決める前に確認しましょう。
民泊売却前に準備する資料と相談の時期

税金を正確に試算するには、購入時と運営中の記録を売却前に揃えておく必要があります。
売却方法を決める段階で税理士とM&A事業者に相談すると、手取り額を踏まえて判断できます。
税金の試算に必要な資料
準備したい資料は、次のとおりです。
- 物件購入時の売買契約書・領収書
- 登記事項証明書
- 開業時の改修工事の契約書・領収書
- 過去の確定申告書と減価償却費の明細(法人は決算書と固定資産台帳)
- 家具家電・設備の購入時の領収書
- 住宅宿泊事業の届出書または旅館業の許可証
- 賃借物件の場合は賃貸借契約書と転貸の承諾書
- 借入金の残高が分かる書類
- 直近の宿泊実績と売上の記録
- 相続した物件の場合は相続税の申告書
届出書に記載した床面積も、自宅兼民泊の利用割合を確認する資料のひとつになります。
相続した物件では、被相続人の購入時の資料も探しておきましょう。見つかるかどうかで、取得費の金額が大きく変わります。
税理士とM&A事業者に相談するタイミング
M&A事業者には、売却方法の選択や価格の目安、買い手探し、許認可や契約の引き継ぎを相談できます。税理士には、売却方法ごとの税額の試算や価格配分、確定申告を相談しましょう。
契約後に価格配分や売却方法を変えるのは難しいため、買い手との条件交渉に入る前に税額の試算を依頼してください。
売却先の選び方によって、手取りや成約までの期間、仲介費用が変わります。運営をやめる方法としては、撤退・廃業や買取も比較の対象です。
廃業の手続きや判断の基準は「民泊の撤退・廃業手続きの進め方とは?今やるべき判断と具体的手順を徹底解説」、買取の流れは「民泊物件・事業の買取先3選!買取の手順や流れ・注意点まで徹底解説」で解説しています。
買取も売却のひとつであり、税金の扱いは変わりません。手取り、成約までの期間、仲介費用を含めて比べましょう。
民泊売却の税金に関するよくある質問
民泊の売却にかかる税金について、よく寄せられる質問に回答しました。
運営が赤字でも売却時に税金はかかりますか
運営が赤字でも、減価償却で取得費が小さくなっていれば、売却時に譲渡所得が出て所得税・住民税がかかる場合があります。
売却価格が取得費と譲渡費用の合計を下回れば、譲渡所得に対する税金はかかりません。ただし個人の土地・建物の譲渡損失は、原則として給与など他の所得と相殺できず、一定の居住用財産に例外があるだけです。
課税事業者の場合は、譲渡損失でも建物や設備の売却代金に消費税がかかります。
売却に関係する税金はいつ納めますか
売却に関係する税金は、税目ごとに納める時期が異なります。個人の場合、所得税は売った年の翌年2月16日から3月15日までに確定申告をして納め、住民税は翌年度に課税されます。
個人事業者の消費税は、原則として翌年3月31日までに申告・納付します。売った年は原則として物件の引渡しの日で判定し、売買契約の日を選ぶこともできます。
法人は、原則として事業年度終了日の翌日から2か月以内に申告と納付を行います。
特例で税額がゼロになっても確定申告は必要ですか
3,000万円特別控除などの特例で税額がゼロになっても、特例の適用を受けるには確定申告が必要です。申告をしないと特例を使えず、本来の税額で課税される場合があります。
相続財産の取得費加算の特例も、同じく申告が要件です。売却の翌年に、売買契約書などの資料を添えて申告しましょう。
まとめ

売却前に確認したいポイントは、次のとおりです。
| 確認する順番 | 内容 | 確認先 |
| 1 | 売却方法(不動産売却・事業譲渡・株式譲渡)と課税される人 | M&A事業者、税理士 |
| 2 | 土地・建物の売却年1月1日時点の所有期間 | 登記事項証明書、売買契約書 |
| 3 | 減価償却後の取得費と、取得費を証明する資料の有無 | 確定申告書、税理士 |
| 4 | 土地・建物・設備・営業権の価格配分 | 税理士、M&A事業者 |
| 5 | 売却時の消費税の課税区分と、売却後の納税義務への影響 | 税理士 |
| 6 | 3,000万円特別控除・取得費加算などの特例に該当するか | 税務署、税理士 |
所得税・住民税は、取得費や譲渡費用を差し引いた譲渡所得にかかります。売却方法と、売り手が個人か法人かによって、税金の種類と税率が変わります。
課税事業者の場合は、それとは別に建物・設備・営業権などの課税資産の売却代金へ消費税がかかります。
建物の取得費は減価償却後の金額で計算するため、購入時の資料がないと税額が大きくなります。事業譲渡では価格配分によっても税額が変わるので、契約前に試算しておきましょう。
民泊&では、民泊物件や民泊事業の売却について、売却方法の選び方からご相談いただけます。税金を踏まえた手取り額を確認したうえで進めたい方も、お気軽にご利用ください。