民泊物件は譲渡できる?権利のみ売却する方法と流れも解説

民泊をやめたいと考えたときに気になるのが「これまで整えた民泊の権利は売れるのか?」という点です。
実は、物件そのものを手放さなくても、営業権や運営ノウハウを譲渡する形で売却することが可能です。
ただし、オーナーの承諾や行政手続きが必要で、正しい流れを理解しておかないとトラブルにつながります。
この記事では、民泊権利の譲渡方法・必要書類・相場・注意点を初心者向けに分かりやすく解説します。
目次
結論|民泊の「権利」は譲渡できる。ただしオーナーの承諾と手続きが必須
結論から言うと、民泊の「営業権」や「運営権」は譲渡可能です。
ただし、物件オーナー(貸主)の承諾と必要な手続きを経なければ成立しません。
賃貸契約は原則として無断譲渡や転貸が禁止されており、これを無視すると違法状態になります。
そのため、まずオーナーに民泊として継続利用する承諾をもらい、さらに行政の届出や許認可を新たに取得する必要があります。
つまり「譲渡できるか?」の答えは「条件を満たせば可能」という形です。
民泊権利の譲渡は法律的に可能?
民泊の権利譲渡は法律上不可能ではありません。
ただし「不動産そのものを売る」のではなく「事業としての営業権を引き継ぐ」形になります。
住宅宿泊事業法(民泊新法)や旅館業法で取得した許可・届出は、基本的に人や法人に紐づいているため、新しい運営者は改めて申請が必要です。
唯一、法人ごと売却(株式譲渡)の場合には許認可もそのまま承継できます。
つまり、法的に認められる形をとれば譲渡は十分可能です。
譲渡の前に確認すべき3つのポイント
民泊権利を譲渡する前には、次の3点を必ず確認しましょう。
- 物件オーナーの承諾:無断譲渡・転貸は禁止。承諾書を必ずもらうこと。
- 許認可の再取得:新オーナーが行政に届出や許可を申請し直す必要がある。
- 予約サイトの引き継ぎ:Airbnbなどのアカウントは原則譲渡不可。新規登録が前提。
これらを事前に理解して準備することで、トラブルを避けスムーズに譲渡できます。
そもそも「民泊の権利を譲渡する」とは
民泊の権利を譲渡するというのは、物件そのものを売るわけではなく、民泊を運営するための「営業権」や「運営権」を他の人に引き継ぐことを意味します。
たとえば、家具・家電を備えた状態のまま運営ノウハウや予約実績を含めて引き渡すイメージです。
つまり「民泊を続けるための仕組み」を売るのであって、不動産自体の所有権を動かすわけではありません。
民泊のオーナーチェンジについては「民泊オーナーチェンジとは?購入・売却・手続き・注意点まで徹底解説」の記事で詳しく解説しています。
不動産そのものを売るのではなく「営業権」を売却
民泊を譲渡する場合、「営業権」だけを売るケースがよくあります。
営業権とは、すでに運営できる状態の物件や設備、予約の仕組みなどをまとめて引き継ぐ権利のことです。
不動産を買う必要がないため、買う側は少ない資金で始められます。売る側も、やめるときに投資したお金を一部回収できます。
オーナーの承諾や、許可の再申請は必要ですが、この方法がいちばん現実的といえるでしょう。
よくある3つのパターン(事業譲渡・法人譲渡・不動産売却)
民泊権利の譲渡には大きく分けて3つの方法があります。
- 事業譲渡:家具・家電・運営体制などを「営業権」として売却。賃貸型で一般的。
- 法人譲渡:運営会社そのものを売却(株式譲渡)。許認可や契約をそのまま承継可能。
- 不動産売却:物件を所有している場合は、建物+営業権を一体で売却。
どの形が適しているかは、物件の所有形態や運営状況によって変わります。
民泊権利を譲渡する一般的な流れ

民泊の権利を譲渡する際は、いきなり契約に進むのではなく、段階を踏んで準備することが大切です。
全体の流れは「現状整理 → オーナー承諾 → 査定・買い手探し → 契約書作成 → 許認可再取得 → 運営引き継ぎ」という6ステップ。
順を追えば初心者でも理解しやすく、スムーズに進められます。
Step1:現状の整理(契約・収支・許可状況)
まずは自分の民泊運営の現状を整理します。
具体的には、
- 賃貸借契約書の内容(用途制限や転貸禁止の有無)
- 直近の収支データや稼働率
- 取得済みの許可・届出の種類と番号の確認
これらを明確にすることで、譲渡の可否や売却額の目安を立てやすくなります。
Step2:物件オーナーから承諾をもらう
次に最も重要なのが、物件オーナー(貸主)からの承諾を得ることです。
賃貸契約では無断での権利譲渡や再転貸は禁止されていることが多いため、オーナーと直接話し合い、承諾書をもらう必要があります。
承諾が得られなければ譲渡は成立しないため、早めに確認しましょう。
Step3:価格査定と買い手探し
承諾が得られたら、次は売却価格を決めます。
査定のポイントは「立地」「稼働率」「許可の種類」「収益性」などです。
そのうえで、買い手を探します。
自分で募集することもできますが、民泊M&A仲介業者を利用すれば短期間で効率的に買い手に出会える可能性が高まります。
Step4:契約書の作成(事業譲渡契約など)
買い手が決まったら、譲渡内容を明記した契約書を作成します。
事業譲渡契約では「引き継ぐ資産(家具・家電など)」「譲渡金額」「契約解除条件」「責任範囲」などを明確にします。
契約書は後のトラブル防止につながるため、専門家に確認してもらうのが安心です。
Step5:許認可や届出の再取得
運営者が変わると、許可や届出も新しい運営者名義で取り直す必要があります。
住宅宿泊事業(民泊新法)の場合は新たに届出を行い、旅館業許可が必要な場合は改めて申請します。
これらの手続きは地域によって所要時間が異なるため、早めに準備するのがポイントです。
Step6:運営引き継ぎ(清掃・予約サイト対応)
最後に運営の引き継ぎを行います。
清掃業者や管理代行会社との契約を新オーナーに切り替えたり、予約サイトの掲載を新アカウントで作り直すなどの対応が必要です。
特に既存の予約がある場合は、どちらが責任を持って対応するのかを明確にし、ゲストへのトラブルを防ぎましょう。
譲渡に必要な書類と契約

民泊の権利を譲渡する際には、口頭の約束だけで進めるのは危険です。
物件オーナー、現運営者、新しい運営者の三者が納得できる形で、必要な書類や契約を取り交わすことが大切です。
代表的なものを整理して紹介します。
物件オーナーの承諾書
民泊を譲渡するには、物件オーナーの承諾が必須です。
承諾書には「民泊用途での利用を認めること」「第三者への権利引き継ぎを承諾すること」などを明記します。
これがなければ契約違反となり、譲渡自体が無効になる可能性があります。
三者合意書(貸主・現借主・新借主)
オーナー、現運営者、新しい運営者の三者で結ぶ合意書です。
賃貸借契約の承継や、原状回復義務の引き継ぎ、今後の責任範囲をはっきりさせます。
後々のトラブルを防ぐためにも、三者で合意した証拠を残しておくことが重要です。
設備・備品の譲渡契約
家具・家電・リネンなど民泊運営に必要な備品は、現運営者から新運営者へ譲渡されるのが一般的です。
その際に「どの備品を」「いくらで」「どんな状態で」引き渡すかを契約書にまとめます。
曖昧にすると、引渡し後に「壊れていた」「数が足りない」といった争いになりやすいため要注意です。
事業譲渡契約に盛り込むべき項目
民泊の営業権を譲渡する契約書(事業譲渡契約)には、以下のような項目を必ず入れましょう。
- 譲渡対象(家具、設備、契約関係など)
- 譲渡金額と支払い条件
- 契約解除条件(許可が取れなかった場合など)
- 責任範囲(過去のトラブルの扱い)
- 秘密保持や競業避止の条項
これらを明文化することで、安心して譲渡を進められます。
民泊権利を譲渡するのにかかる期間
民泊の権利を譲るには、ある程度の時間がかかります。
だいたい2〜3か月くらいかかることが多いですが、早ければ1か月、長いと半年かかることもあります。
あらかじめ流れを知っておくと、予定を立てやすくなります。
平均的な売却期間(2〜3か月程度)
買い手探しから契約成立までの期間は、一般的に2〜3ヶ月程度です。
条件の良い物件なら1〜2か月で決まることもありますが、買い手との交渉や契約書作成に時間がかかるのが通常です。
余裕をもって半年くらいを目安にすると安心です。
許認可の再取得にかかる期間
運営者が変わると、許可や届出を新しく取り直す必要があります。
民泊新法の届出は、一般的に2〜4週間ほどで終わりますが、旅館業の許可は消防や保健所のチェックがあるため、2〜3か月かかることが多いです。
地域によって違いがあるので、事前に役所に確認しておくと安心です。
スムーズに進めるコツ
期間を短縮するためには、次の工夫が効果的です。
- オーナーへの承諾確認を早めに行う
- 必要書類(契約書や収支データ)を事前に整理しておく
- 許認可の事前相談を行政や専門家にしておく
- 仲介業者を利用して買い手探しを効率化する
準備を前倒しで進めることで、譲渡全体のスケジュールを大幅に短縮できます。
売却価格の相場と決まり方

民泊の権利を売るときの価格には、はっきりした決まりはありません。
たとえば、「立地」や「稼働率」、「どんな許可を取っているか」など、いろいろな条件で決まります。
同じくらいの大きさの物件でも、条件しだいで価格が大きく変わるのが特徴です。
立地・稼働率・許可の種類で大きく変わる
まず立地は価格に直結します。
東京や大阪など観光需要の高いエリアは買い手が多く高値がつきやすいです。
次に稼働率やレビュー数が高い物件は安定収益が期待できるため評価が上がります。
また、旅館業許可を取得している物件は通年営業が可能で価値が高く、民泊新法(180日制限あり)の物件よりも売却価格が伸びやすい傾向があります。
小規模民泊の相場感(数百万円〜)
ワンルームや小規模の民泊物件であれば、数百万円前後で取引されることが多いです。
例えば年間利益が200万円であれば、その2〜3倍程度の400万〜600万円で売却されるケースが一般的です。
ただし、需要の高い地域やレビュー実績が豊富な物件では1,000万円以上の提示がされる場合もあります。
高く売るための工夫(実績データや改善余地の提示)
より高い価格で売るには「データの見せ方」が重要です。
直近の稼働率や売上の推移を表やグラフでまとめ、収益が安定していることを示しましょう。
また、改善余地を提示するのも効果的です。
例えば「平日の稼働率を上げればさらに収益が伸びる可能性がある」といった説明は、買い手に将来性を感じさせ、価格アップにつながります。
よくあるトラブルと回避方法

民泊の権利を譲るときは、スムーズに進まないこともあります。
よくあるトラブルをあらかじめ知っておき、対策を用意しておくと安心です。
物件オーナーが承諾してくれない
最大の壁は「オーナーの承諾が得られない」ケースです。民泊に対して抵抗があるオーナーも少なくありません。
このような場合は、譲渡後の運営方法を丁寧に説明したり、必要に応じて「承諾料」を支払ったりすることで、理解を得られることがあります。
それでも承諾が難しいときは、オーナーと新しい借主があらためて契約を結ぶ形に切り替えるのが現実的です。
行政から許可が下りない
民泊の譲渡では、物件自体が変わらなくても、新しい運営者が申請し直すと許可が下りないケースがあります。
理由は、許可や届出は「物件」ではなく「運営者」に紐づくためです。
申請の際には消防設備や建築基準を再度チェックされるので、以前はOKだった物件でも、担当者の判断や基準の見直しによって追加工事が必要になることがあります。
また、新しい運営者自身の条件(欠格要件や運営体制など)が審査対象となる場合もあります。
こうしたリスクを避けるには、事前に役所へ相談して適合性を確認し、必要なら追加工事の見積もりを取って譲渡前に買い手と共有しておくことが大切です。
レビューや予約サイトアカウントが引き継げない
Airbnbなどの予約サイトでは、アカウントの譲渡はできません。
そのため、レビューやスーパーホストの実績を新しいオーナーが引き継ぐことはできない仕組みです。
このデメリットを補うには、旧オーナーが運営マニュアルや清掃の体制をきちんと引き継ぎ、「レビューがなくても安心」と買い手に思ってもらえる工夫が大切です。
清掃スタッフや外注先が続かない
清掃会社や外注スタッフが契約の切り替えに応じず、運営が止まってしまうことがあります。
これを防ぐには、事前にスタッフと買い手を引き合わせておいたり、代わりの業者を用意しておくと安心です。
また、人材や外注先の引き継ぎについては、「譲渡の対象」として契約書にきちんと書いておくとトラブルを防げます。
民泊M&A仲介サービスを使うメリット

民泊の権利譲渡は、契約・法務・許認可・買い手探しとやることが多く、個人で進めるのは大変です。
そこで役立つのが「民泊専門のM&A仲介サービス」です。
専門家が間に入ることで、スムーズかつ安全に売却を進められます。
専門家による手続きサポート
民泊の譲渡には、オーナー承諾書・三者合意書・事業譲渡契約など、専門的な書類が必要になります。
仲介会社を使えば、行政書士やM&Aの経験があるスタッフがサポートしてくれるため、書類や手続きのミスを防げます。
はじめてでも安心して進められるのが、大きなメリットです。
買い手探しが早く進む
仲介会社は、すでに民泊事業に関心のある投資家や法人とネットワークを持っています。
そのため、自力で探すよりも短期間で買い手候補とマッチングできます。
売却成立までの期間を短縮できるのは大きなメリットです。
適正価格で売却できる
売却価格は「立地」「稼働率」「許可の種類」などで変わりますが、素人判断では安く売りすぎるリスクがあります。
仲介会社は市場データや取引実績をもとに査定するため、適正価格で売却しやすくなります。
結果的に手取り額が増える可能性もあります。
秘密を守りながら進められる
「民泊を売却したい」という情報は、オーナーや近隣住民に知られたくない人も多いでしょう。
仲介会社を通せば、匿名で案件を紹介し、秘密保持契約を結んだ相手にだけ詳細を開示する形で進められます。
安心して売却活動を行えるのも魅力です。
弊社に相談いただくとできること
弊社では民泊M&Aの支援を専門的に行っており、初めての方でもスムーズに売却できるようにサポート体制を整えています。
無料で相場査定・相談可能
まずは「いくらで売れるのか知りたい」という方向けに、相場査定をご用意しています。
収支や稼働率のデータをお預かりすれば、すぐに目安をお伝えできます。
売却の流れや注意点も、無料でご説明します。
匿名で買い手探しをスタートできる
物件や運営状況を匿名化した上で、弊社ネットワークの投資家・法人にご紹介できます。
情報が外部に漏れる心配がなく、安心して買い手探しを始められます。
気になる買い手が見つかれば、秘密保持契約を結んでから詳細を開示します。
契約書や手続きもワンストップで支援
契約書や手続きもワンストップで支援可能です。
- オーナー承諾書や事業譲渡契約の作成サポート
- 許認可の手続きに関するアドバイス
- 清掃会社や運営代行の引き継ぎ
まで、すべてまとめてサポートします。
手続きが多くても、弊社がしっかりサポートしますので、初めての方でも安心です。
よくある質問(FAQ)
賃貸物件でも権利を売却できますか?
はい、賃貸物件でも営業権の譲渡は可能です。
ただし、物件オーナー(貸主)の承諾が必須であり、無断で進めると契約違反になります。
承諾書や三者合意書をしっかり交わしておくことがポイントです。
どれくらいで売れるものですか?
平均すると2〜3か月ほどで成約するケースが多いです。
条件の良い物件なら1〜2か月で売れることもありますが、買い手との交渉や許認可の取り直しを考えると、半年程度の余裕を見ておくと安心です。
売却後の予約はどうなりますか?
既に入っている予約は、どちらの運営者が対応するかを事前に決めておく必要があります。
譲渡契約で「引渡し日以降の予約は新オーナーが責任を持つ」といった取り決めをしておくと、トラブルを防げます。
税金はかかりますか?
はい、譲渡益には税金がかかります。
個人事業としての事業譲渡なら「事業所得」として課税され、法人の場合は法人税の対象です。
株式譲渡なら譲渡所得扱いになるため、取引の形によって課税区分が変わります。
誰にも知られずに売却できますか?
可能です。
仲介会社を通せば、案件情報を匿名化して買い手候補に紹介できます。
詳細情報は秘密保持契約を結んだ相手にだけ開示する形なので、オーナーや近隣に知られずに売却を進められます。
まとめ:民泊の「権利」は譲渡できるが、許可や手続きが必要
民泊の営業権は「オーナー承諾」「契約書の作成」「許認可の再取得」といった手続きを踏めば譲渡可能です。
不動産そのものを売らなくても、民泊運営をそのまま引き継げるのが大きなメリットです。
一方で、オーナーの理解や行政手続きが欠かせないため、仲介会社や専門家のサポートを活用するとスムーズに進められます。
売却を検討している方は、まずは相場査定から始めてみましょう。