民泊M&Aの視点で考える、NOT A HOTELに学ぶ「宿泊事業の分業化」
民泊は、物件だけでなく運営の仕組みごと売買される時代になりつつあります。
一方で、多くの物件が売りたくても売れない現実に直面しています。
この記事では、NOT A HOTELの設計をヒントに、民泊を「事業」として捉え直す視点を解説します。
この記事の監修者

情報工学修士のエンジニア出身起業家。13歳から20年以上プログラム開発に従事。
スマートコントラクト黎明期からWeb3の実装と事業化を経験。スイスでDAO+ICO型の資金調達プラットフォームを開発し、金融当局の認可のもと7,100ETHの調達を実現。
生成AI×NFTによる新規事業では代表としてプロダクト立ち上げから運営までを主導し、先端技術を“事業として成立させてきた”実行力を持つ。
現在はXTELA代表として、ブロックチェーンや生成AIをはじめとする先端技術を、開発・設計・監修を通じて、企業やプロジェクトが持続的に成長できる仕組みづくりに取り組んでいる。
目次
民泊M&Aで評価されるのは運営の仕組み

民泊M&Aにおいて、立地や建物の新しさは絶対条件ではありません。買い手が重視するのは誰が運営しても利益が出る仕組みです。
つまり、評価の中心は不動産よりも「宿泊事業として回るかどうか」です。
具体的には、以下の3点が評価のポイントです。
収益の再現性
過去の稼働データに基づき、将来の利益が予測できることが重視されます。
単なる一過性のブームではなく、季節変動を織り込んだ安定性がポイントです。
利益構造の透明性
清掃費や手数料、消耗品費などの経費の見える化されていることが欠かせません。
売上から実質的な利益を、第三者が同じ数字を出せる状態が求められます。
運用の標準化
予約から清掃まで、すべての工程がマニュアル化されることが必須です。
オーナー独自のスキルや人脈がなくても、現場が回るかが鍵です。
民泊事業がM&Aで成立しにくい理由

多くの民泊が売却に苦戦する最大の理由は「事業の属人化」です。
たとえば、価格調整やトラブル対応は、オーナー個人の資質に依存しています。運営一体型モデルと呼ばれるこの形態は、買い手にとってリスクです。
なぜなら、属人化したノウハウは継承が困難であり、オーナーが交代した途端にサービス品質が低下する懸念があるからです。
事業としての価値は、運営ルールを「権利」として切り離せるかにあります。
この難題を解決するヒントが、NOT A HOTELのモデルにあります。
NOT A HOTELの事業設計

NOT A HOTELは「ホテルにもなる自宅」という、新しい仕組みを提示しました。
その本質は、所有・利用・運営という3つの役割を完全に切り離した点にあります。
自分が使わない日を自動でホテルとして貸し出し、清掃や顧客対応は運営会社が担います。
その結果、オーナーはアプリを見るだけで、特定の個人に依存しない運用体制が構築されています。
また、年間10日単位からのシェア買いを可能にし、権利の所在をデジタル上で明確化しました。
こうした役割の分離によって、宿泊事業は個人の努力に頼るものからシステムが守るものへと進化しています。
分業化された宿泊事業の強み
分業化の思想は、個人運営の民泊にも応用できる経営戦略です。そして、システム化された事業は、M&Aにおいて強力な武器となります。
事業の引き継ぎがスムーズになる
分業化の視点があれば、事業の引き継ぎがスムーズに進みます。
なぜなら、マニュアルにより、買い手は即座に運営を再現できるからです。
つまり、一から構築する手間を省き、「完成された時間とノウハウを買う」というM&Aの利点を最大化させることにつながります。
運営品質を保ちやすい
分業化は、運営品質の継続性を担保します。
担当者が変わってもクオリティが落ちず、高評価を維持できる安心感は、そのまま査定額のアップにつながります。
オーナーがいなくても回る仕組みこそが、事業としての価値を高めてくれるのです。
ブロックチェーンは何を担うのか

ここで登場するブロックチェーンは、単なる決済手段や投機ではなく、権利の記録と移転を、手間なく確実にするための技術です。
1. 権利の真実性を担保し、名義確認や手続きを効率化
これまで、誰がどの物件の何日分の利用権を有しているかを証明するには、運営者が一元管理するデータベースと膨大な確認プロセスが必要でした。
特に名義変更の手続きは煩雑で、管理コストが流通のネックとなっていました。
しかし、ブロックチェーンは、この権利の所在を書き換えられない形で記録し、第三者の介在なしに「権利の真実性」を証明できます。
こうした仕組みは、名義変更や権利移転に伴う手続きの煩雑さを減らすことを目指した設計です。
権利管理にかかる負担を、構造的に軽減しようとする方向性を示しています。
2. 透明性の確保と後から確認できる仕組み
過去の利用履歴や収益、修繕の記録をブロックチェーンで管理すれば、後から誰でも確認できる状態をつくれます。
その結果、M&Aにおける資産査定の際、買い手は提示されたデータの正当性を即座に確認できるため、取引がスムーズに進みます。
3. 暗号資産(NAC)による新しい経済圏
2026年1月の段階で、NOT A HOTELでは独自トークン「NOT A HOTEL Coin」(NAC)を基盤とした仕組みが稼働しています。
NACは単にホテルを利用する権利を保有するだけでなく、具体的には以下のような高度な経済設計を可能にしています。
- レンディング報酬: 保有する利用権を貸し出して報酬を得る仕組み
- バイバック:ホテル運営収益の一部を用いたトークンの買い戻しによる価値の還元
- プロジェクト参加報酬:エコシステムへの貢献に応じたインセンティブの付与
これらの仕組みは、宿泊事業を「購入して終わり」の不動産ではなく、持っているだけで新しい利益や楽しみが生まれる動的な資産へと進化させます。
ブロックチェーン技術は、分業化や円滑な事業承継を成立させるための潤滑油として機能しています。
まとめ:事業を「デジタル資産」へとアップデートする

民泊を単なる不動産として見る時代は終わりました。
これからは、宿泊施設を1つの事業として捉え、価値を最大化させる視点が大切です。
M&Aにおいて評価されるのは、第三者へ引き継ぐ設計がなされているかどうかです。
オーナー個人の資質に依存せず、誰が運営しても同じクオリティで収益を生み出せる仕組みこそが、売却価格に直結する真の資産となります。
また、ブロックチェーンもそれ自体を目的とする思想ではなく、権利の所在を明らかにし、取引コストを下げ、透明性を担保するための手段に過ぎません。
技術を賢く取り入れることで、事業の信頼性はデータによって裏付けられるようになります。
NOT A HOTELが提示したモデルは、次世代の宿泊事業をどう設計すべきかを問い直すためのヒントです。
この視点を押さえるだけでも、民泊の売れる形が見えてきます。
なお、ブロックチェーン技術を用いた
権利管理や事業設計のあり方については、
ブロックチェーン開発会社XTELAが技術的な視点から情報発信を行っています。
XTELA JAPAN株式会社 ▶ https://xtela.jp